職場と家の往復の毎日が続いていた。
何処かへ遊びに行きたくても、金がない。
稼いできた金は食事代とメイド代、そして朽木の壊したシンクの修理代に消えてしまった。
「マジかよ…。」
つまらない。こんなにつまらないなんて思わなかった。
瀞霊廷にいた時は、隊舎に行けばたくさんの死神がいて。
誰かしらからかったりして遊んだのだが。
――ピンポーン
暇を持て余していたところに、来客を告げる音が鳴る。
玄関を開ければ、そこには三番隊の隊長『市丸』がいた。
「………。」
「………。」
「六番隊の副隊長さんは、ホンマノリ悪いなぁ。」
「す、すいません。」
「引っ越してきたばっかりで暇や思うてな。遊びに来たで。」
市丸はいつもの表情でヒラヒラと手を振って。
遊びに来てくれたのは嬉しいのだが、あのポーズはないよな。
苦笑いを浮かべた恋次。
ふと思い出す。
「そういえば…。どうして藍染隊長と一緒じゃなかったんすか?」
その言葉を聞いた市丸はニヤリと笑い。
「藍染さん、今忙しいらしくてな。ほら、あの人『天に立つ』とか言わはったやろ?」
「あー、そういえば。」
「今な、でっかい神殿建てとるわ。」
「まさか……藍染隊長一人で?」
「うん。」
爽やかに笑う市丸。
『神殿』を一人で建てられるものだろうか?
この人逃げてきたに違いねぇ。
絶対そうだ。
「面倒だから逃げてきた、ってことっすか?」
「大正解!!さすがやね。」
大げさに驚く市丸の姿を見て。
ほんの少し。
少しだけ。
藍染隊長が哀れに思えてきた恋次でした。
PR
六番隊の隊長と副隊長が揃ってシムの世界にやってきた。
「これはウサギ小屋ではないのか?」
「隊長…。これが一般的なサイズです。それに俺ら金ないんでこれが限界っすよ」
「使用人もいないのか?」
「メイドさんなら雇いました」
四大貴族のボンボンは些か不満げだったが。
それでも。
隊長は「帰る」ときっと言うだろうと。
それを止める苦労を覚悟していたのだが。
「これはなんだ?」「どう使うのだ?」
この場所に慣れようとしている姿に、恋次は呆気に取られてしまう。
「そういえば。先日、市丸の所で火事があったらしいな。」
「あー。更木隊長が出火の原因らしいっすね。」
「よし、恋次。料理を学べ。」
「え?俺がですか?」
「私に料理を学べと?」
白哉に睨まれたが、ここは引けない。
引いてうっかり料理でもされてみろ。
更木隊長とと同じ目にあうのがオチだ。
「隊長もお願いします。」
「仕方ない…。」
渋々ながら料理書を手に取る白哉。
瀞霊廷にいる時では考えられないような素直さで。
恋次はこっそりと。
案外うまくやっていけそうだな、と安堵の息を洩らしたのだった。
<<
前のページ