「新しい施設が出来たらしいっすよ。」
三人揃って朝食を食べている時のこと。
知り合いの女性から一度誘われたらしいが、丁度仕事が忙しく断ったのだという。
だが修兵は、その施設が気になるらしく。
「みんなで行ってみませんか?」
「めんどくせぇ。俺は行かねぇぞ。」
嫌がった剣八だが、その後ろでは。
「うん、そういう事で連休とらせてもらうわ。もちろん更木クンもや。」
電話をかけ、仕事先へ休む連絡を入れているギン。
そんなこんなで、嫌がる剣八を連れ無理矢理バカンスにやってきた三人。
「寒いなぁ。ボク皮膚が薄いから寒いの苦手やねん。」
「だったら来なきゃよかっただろうが。」
「まぁ、そう言わないでくださいよ。」
喧嘩を始めてしまいそうなギンと剣八をなだめ、修兵はさっさと一人遊びに行ってしまった。
「何したらいいんだ?」
「あ、スノーボードあるで。あれやろうや。」
見れば、ハーフパイプのような設備。
「市丸お前出来るのか?」
「もちろん。更木クンは出来ひんの?」
ニヤニヤと笑うギンに、剣八は『喧嘩は売られたら買うもんだ』と心の中で呟き。
「出来るに決まってんだろうが。」
華麗なジャンプを決めて見せた。
だが、如何せん見よう見まねだ。
(――管理人、爆笑中)
着地に失敗。
ギンは腹を抱えて大爆笑。
それが心底気に食わなかった剣八は、顔を真っ赤にして怒る。
「テメェもやってみろ!!」
コイツにだって出来るわけがない。
と、思っていたのに…
それは見事なジャンプだった。
難易度の高いワザを軽々と決め。
終わった時には、どこかの子供まで。
「お兄ちゃん凄い!!」と手を叩いて喜んでいた。
いつの間にか修兵までやってきて。
「市丸隊長、マジ凄いっすね!!」
「おおきに。」
本当に嬉しそうに笑った市丸さんでした。
(面白くねぇ!!)
一人食事をとっていた剣八。
そこに子供がわらわらと寄って来る。
(なぜか剣八さんは子供うけが良い。)
その中の一人が姿は全く違うのに、言動がやちるによく似ていて。
「ふーん。じゃぁ、お兄ちゃんはあの人にいじめられたの?あたしが仕返ししてきてあげるよ!」
こんな子供に出来る仕返しなどたかが知れてる。
だが、何故か嬉しかった。
「あぁ、頼んだぞ」
たった一つ、嬉しかったことはこれだけだったが。
バカンスに来てよかったかもな、と思った剣八さんでした。
突然子供に呼び止められ。
「剣八のお兄ちゃんいじめたでしょ!」
なんやのこの子?
くどくどと一時間以上子供に説教された市丸さん。
「ホンマごめんて。もう許してや」
こうして初めてのバカンスは幕を閉じたのでした。